えしぇ蔵小説集

福岡ESEグルメのえしぇ蔵の小説集です。それなりにがんばってるつもりです。

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千の灯火(ともしび) 第14回

 翌日、会社で原稿をまとめていると、高尾が俺の机の前をにやにやと笑いながら通り過ぎて行った。どうも気になる笑い方だった。きっと遠田を誘うのに成功したに違いない。他の人の目もあるのでメールで聞いてみた。
 “なんや?その笑い。誘うのに成功したか?”
 すぐに返事が来た。話したくてうずうずしているのが文字から伝わってきた。
 “成功した”
 “どこに行くことにした?”
 “土曜日に大名の雄屋(たけや)に連れて行く”
 “そうか。よかったやん”
 “すぐOKしたけん、逆になんか拍子抜けした”
 “頑張れよ。彼女も今は一人みたいやし”
 “おうよ!頑張るけん。日曜にメールで報告するけん”
 日曜?俺は日曜に何か用事があったような気がしたが思い出せなかった。
 ここで瀬戸山課長が近づいて来たのでメールは中断した。
 「今月末の熊本の美術展の話聞いた?」
 「あ、二天像の件でしょ?和尚さんからメールが来ました」
 「運び出す日と美術展の初日は取材に行くやろ?」
 「行きます」
 「高尾も行ったがいいね」
 「はい。美術展の日も高尾の写真がいります。初日だけは撮影OKですから」
 「了解。高尾に言っとく」
 「いいですよ。俺が言っときます」
 瀬戸山課長が離れていくと、また高尾にメールした。
 “月末に熊本で美術展があるけん、よろしく。千如寺の二天像が出展されるけん”
 “あいよ。”
 “運び出す日も撮影するよ”
 “あいよ。”
 ここでふっと思い出した。日曜!遠田がドライブにどうですかと言ってた日だ。高尾が誘う日の翌日に行くのもなんか非情な気がした。とりあえず日曜は空いてないことにしておこうと思った。
 そういえば彼女が見当たらなかった。昨日の暗い表情がちょっと気になった。俺は席を立って瀬戸山課長の机に行って聞いてみた。
 「今日、遠田休みですか?」
 「いや、さっき高尾が連れて出かけよったよ。内田には俺から言っておきますて言いよったけど、聞いてないと?」
 「え?そうですか。いや、別に彼女がおらんでも構わんのですけど」
 「どうや?あの子はちゃんとやりよるか?」
 「はい。仏教芸術に興味持ったみたいですよ。昨日も千如寺で面白そうに仏像眺めてましたよ」
 「そうか。あの子にも記事書かせるか?」
 「仏教行事のこととか、少し書かせてみようかなと思います。私が後で修正するんで、まずは彼女なりに書かせてみます」
 「うん。彼女のことよろしく頼むね。」
 「はい」
  なんだ。高尾め。彼女と一緒にいるんじゃないか。そう言えばいいのに。俺は高尾の行動の速さにちょっと驚いた。俺はすぐにメールした。
 “お前、今遠田と一緒におるっちゃろ?”
 “うん。あ、そうやった、お前に言うの忘れとった”
 “それはいいっちゃけど、二人で何しようと?”
 “撮影機材の買出しでヨドバシに来とる。実は土曜日の件はさっき聞いたっちゃ”
 “それが目的で連れ出したんやろ?”
 “わかる?”
 “わかるくさ!”
 “彼女今何しようと?”
 “デジカメいじってる”
 “まぁとにかく土曜頑張れよ”
 “うひひ”
 “なんがうひひか”
 日曜の報告が楽しみだ。俺とのドライブは無期延期だなと俺は安心した。
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